消えかけていた本物のしょっつる復活への取組み

しょっつる復活の原点

昔はしょっつるは自分の家で造るもの。特に漁師の家では殆どの家で造っていたと思います。
昔は醤油は高級品で、毎日の食事に使えるようなものではなかったため、代わりに気軽に使えるしょっつるを造っていたんです。

ところが、東京から帰ってきて市販されているものを色々分析してみたら、愕然としてしまいました。
漁師さんたちが自家用として丁寧に造っているもの、つまり「受け継がれてきた伝統の味」と比べるとその差が大きすぎる。
このままでは市販のしょっつるは、消費者に見放されてしまうと思ったんです。

折りしも、漁獲の激減によりハタハタは価格高騰し、何より92年からの全面禁漁という苦境ではあったものの、それでも「こういう時だからこそ、本物の味を紹介したい」という決意で、97年から食品研究機関の専門家と試験醸造を開始。
「いま、確固としたしょっつるを後世に残さなければ、秋田のしょっつるは幻と消え、ハタハタの食文化は守れなくなる」という危機感が私を一歩前へと突き動かしたのです。

試行錯誤の末の結晶

臭みのないまろやかな風味をもつ「秋田しょっつる」

ハタハタしょっつるの復活に際して「原料はハタハタと塩だけ」「魚臭くない、上品でまろやかな味」という譲れない一線を自らに課しました。
83年から始めたしょっつる製造は、試作と失敗の繰り返しという手痛い経験からの再出発でした。
製造元の高齢化と後継者不足による廃業も続いていた。原料のハタハタは減少によって高騰、しかも冬の約2ヶ月しか使われない。コストが合わないから皆やらないわけで、始めた頃は「道楽だ」「バカだ」と色々言われたりもしました。

昔ながらの味と言えど、自身が江戸や明治の味など知る由もない。試作品の分析結果を踏まえ一歩ずつ理想とする香りと味に近づけていくしかない。
愚直ながらこの正攻法は功を奏し、2000年、臭みのないまろやかな風味をもつ「秋田しょっつる」を作り上げることができたのです。

秋田の地のハタハタ食文化が育てた「時の結晶」です。

»ハタハタしょっつるができるまで

スローフードジャパン主管「味の箱舟」に認定

86年にイタリアで生まれたスローフード運動は世界的な広がりを見せています。
その日本国内における牽引役でもある「スローフードジャパン」が主管する「味の箱舟」プロジェクトに2006年12月21日に諸井醸造の「ハタハタのしょっつる」が認定されました。

»味の箱舟(スローフードジャパンHP)